2022年10月9日日曜日

出口のない海  読みました!!

タイトル : 出口のない海

賞種   : -

出版   : 講談社文庫

著者   : 横山 秀夫

イラスト : -



今日のインプレダクションはコレ!

戦中ドラマ作品です!



その胸中やいかに


学生野球の世界から軍隊へ。

時代の流れに揉まれて――

人間魚雷『回天』の戦中ドラマ。

なかなかの余韻がありました。

搭乗者たちがどんな思いで特攻兵器に乗ったのか。

その心情は多様な想像によって描かれることになります。

本作はカッコよく描かないところに際立つ妙技が見えます。

決死の出撃をしつつも・・・という事態は多くの発見にもなるでしょう。



今日の甘口!


・流れ

  大学野球の生活に戦争の影が忍び寄る。

  太平洋戦争が始まり、

  月日が経つと学生の徴兵免除も遂に取り消されてしまう。

  野球部のメンバーはそれぞれ徴兵されてしまった。

  ピッチャーの青年は訓練に励む中、

  ある日特別な兵器の搭乗員募集を耳にする・・・という流れ

・テイスト

  搭乗員の気の持ちようがメインです。

・キャラ

  【並木 浩二】

  野球部ではピッチャー。

  肘を壊してからは多段変化の魔球を

  完成させようと練習している。

  流れに呑まれてしまいながらも、

  時折優しい自分に戻る。

・戦争は単純でない

  戦争にまつわる情報は勇ましさ・哀しさの他にも

  色々あることが分かります。

  特攻は必ず敵に激突して死ぬわけではありません。

  完成度の低い兵器なので訓練中に死んだ人も大勢いる。

  いざ発射という時に故障で出撃できず帰投した人もいる。

  そういうことは知っておいた方が良いですね。



今日の辛口!


・全体

  悪くない終わり方だったと思います。

  ただ、途中駆け足だった部分に対する手当が

  別のアプローチにした方が良かったんじゃないかなあという気も。

  ともあれ学生辺りの年代の子にはぜひ読んでほしいですね。



以上、

流れに呑まれる、な?!

戦中ドラマ作品でした!


2022年10月2日日曜日

少年と犬  読みました!!

タイトル : 少年と犬

賞種   : 第163回直木賞

出版   : 文藝春秋

著者   : 馳 星周

イラスト : -



今日のインプレダクションはコレ!

日常系作品です!



奇跡の犬


誰かのもとへ突然現れる犬。

一時期人間の世話になるがまた放浪しーー

短編を編んで繋げた日常系。

なかなか良かったけどちょっと複雑。

死の影が濃い。

それは扱った事象が大震災だからか。

気軽に手を出してはいけない事象を書いたその心境は

どんなものだったろう。



今日の甘口!


・流れ

  ヤバイ仕事の手伝いをしている男は野良犬を見つけ、

  飼うことにする。

  この犬は車に乗せているといつも一定の方角を気にしていることに気付く。

  そちらの方に飼い主がいるのだろうか・・・という流れ。

・テイスト

  誰かが野良犬を見つけて飼う、

  しかし飼った人が事故等で死んでしまい、

  犬はまた別の場所で新たな人に飼われるというもの。

・キャラ

  【多聞】

  シェパードと和犬のミックス犬。

  賢く躾が行き届いている。

  【和正】

  ヤバイ仕事の手伝いをしている男。

  震災・親の認知症と生活苦でお金が欲しい。

  仙台のコンビニで多聞を見つけて飼うことにする。

  【ミゲル】

  窃盗団の男。

  事件のどさくさで和正から多聞を奪って新潟まで連れていく。

  【大貴】

  トレイルランニングに夢中の男。

  富山で多聞を見つけて飼うことに。



今日の辛口!


・全体

  犬と人との関係性は見応えがあった。

  犬がいることで一時やすらぎを感じるが、

  飼い主は次々死んでいく。

  それは一見するとご都合に見えない巧みさがあるんだけれども

  ラストまで行くと犬にまつわる設定が

  ちょっと都合よく組まれていることに気付くのが惜しいところ。



以上、

旅する犬、な?!

日常系作品でした!


2022年3月13日日曜日

ひきこもりの弟だった  9個星です!!

タイトル : ひきこもりの弟だった

賞種   : 第23回電撃小説大賞・選考委員奨励賞

出版   : メディアワークス文庫

著者   : 葦舟ナツ

イラスト : -



今日のインプレダクションはコレ!

現代ドラマ作品です!



評価は

★★★★★★★★★☆

9個星です!!



人を愛する


心を閉ざして生きる男が

突然結婚生活に突入し――

家庭の事情に注目した現代ドラマ。

かなり良かった。

読み始めはまたしょーもない設定か……

という感じでしたが、

それを過ぎてからは割と

家庭の事情に真っすぐ向き合って

書いてあったので良かったです。

結婚や出産を真剣に考えさせられる

一冊ですね。



今日の甘口!


・流れ

  心を閉ざして生きる男に

  駅で通りがかった女が

  いきなり結婚しましょうと言ってきた。

  それから二人の共同生活

  が始まる。

  夫婦の営みはしないけど

  結婚生活は送るという

  淡々とした共同生活が続くが・・・という流れ

・テイスト

  男の家庭事情、

  それから友人の家庭事情、

  みたいにみんな家庭事情を

  抱えています。

  粗製乱造の作品は家庭事情を

  設定のスパイスとしてしか使っていませんが、

  本作の場合これを

  軸に据えているので

  生々しい会話とかも出てきますよ。

・キャラ

  【啓太】

  主人公男性

  心を閉ざしてただただ生きている

  【千草】

  ヒロイン

  いきなり結婚しようと言ってきた女性

  過去を語らない



今日の辛口!


・全体

  終わり方がこの展開でなかったら

  雑多な商品の一つとして

  ただ埋もれてしまうだけだったように思います

  ので、

  終わり方もこれで良かったです。

  ただ、

  実際とちょっと乖離してないかな~と

  思う部分もあって、

  実際は家庭の事情アリで捻くれてしまうと

  結婚も出産も早いんじゃないかなあ

  と思いました。



以上、

いきなり結婚しましょう、な?!

現代ドラマ作品でした!


2022年2月12日土曜日

破滅の刑死者 内閣情報調査室「特務捜査」部門CIRO-S  8個星です!!

タイトル : 破滅の刑死者 内閣情報調査室「特務捜査」部門CIRO-S

賞種   : 第25回電撃小説大賞・メディアワークス文庫賞

出版   : メディアワークス文庫

著者   : 吹井 賢

イラスト : カズキヨネ



今日のインプレダクションはコレ!

異能系作品です!



評価は

★★★★★★★★☆☆

8個星です!!



何を賭けるか


危険な賭けを臆せず行う少年は、

秘密組織に狙われることになるが――

一般文芸に近付けた異能系。

こういうのもあるんだと思いました。

メディアワークス文庫であれば当然出てきていいもの、

という感じがしましたね。

元々ラノベで広く描かれていたものを一般文芸に近付けて描けばこうなる、

という見本のような綺麗な仕上がりです。

心理戦が従来よりもより楽しめると思います。



今日の甘口!


・流れ

  とある少年は事件に巻き込まれたことで

  裏社会から狙われることになる。

  少年の元には国家組織が現れ、

  少年はその組織に協力して裏社会の組織とやり合うことになる・・・という流れ

・テイスト

  異能系としては体系化されたものです。

  それを一般文芸に近付けた書き口となります。

  異能を控えめにした分を心理戦に割り振っている感じですね。

・キャラ

  【戻橋 トウヤ】

  危険な賭けも平気で行う変わり者の男。

  とある超能力を有しているが秘密にしている。

  【雙ヶ岡 珠子】

  国家機関で働く女性。

  トウヤと組んで行動することになる。



今日の辛口!


・全体

  この手の悪党が沢山出てくるものにしては

  終わり方がスパッとしていて良かったです。

  「正義」への問いかけがちょいちょい出てくるお話って

  分かってる感を出しているだけのものが殆どですからね。



以上、

一般文芸に近付けた、な?!

異能系作品でした!


2022年1月30日日曜日

声優ラジオのウラオモテ #01  8個星です!!

タイトル : 声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?

賞種   : 第26回電撃小説大賞・大賞

出版   : 電撃文庫

著者   : 二月 公

イラスト : さばみぞれ



今日のインプレダクションはコレ!

お仕事ドラマ作品です!



評価は

★★★★★★★★☆☆

8個星です!!



この先どうなる?


女子高生の声優二人が一緒に仕事をし始めるが、

お互いがクラスメイトだと判明し――

ライトにしたお仕事ドラマ。

面白かったです。

声優というお仕事ではありますが、

女の子二人が頑張ったり傷ついたりと青春する

姿が描かれています。



今日の甘口!


・流れ

  声優として頑張る由美子は人気が伸びない子。

  オーディションに落ちまくりで先が不安。

  そんな中、由美子は人気急上昇中の新人声優とコンビでラジオ番組を

  やることになった。

  しかしその人気急上昇中の声優はクラスメイトだと判明する。

  同じクラスにいたのに今まで接点がなかった二人は

  仕事を通して仕事以外の時間でも関わるようになり・・・という流れ。

・テイスト

  反りが合わない二人が出会い、

  何だかんだで仲良くなっていく、

  というものです。

・キャラ

  【佐藤 由美子】

  声優3年目の女子。

  もうそろそろ先が心配になってきているが

  オーディションにはなかなか受からない。

  ギャルだが弾けているわけではない。

  【渡辺 千佳】

  声優2年目の女子。

  人気急上昇中。

  教室では根暗女子。



今日の辛口!


・全体

  本当にライトでシンプルで楽しいと思います。

  最後にはほろりとする事件も。

  同業者への嫉妬を吐露するのも良かったです。

  でもやっぱり、

  もう少し何かが欲しいなぁ・・・



以上、

何だかんだのコンビ、な?!

お仕事ドラマ作品でした!


2022年1月15日土曜日

緋色の研究  読みました!!

タイトル : 緋色の研究

賞種   : -

出版   : 新潮文庫

著者   : コナン・ドイル

イラスト : -



今日のインプレダクションはコレ!

ミステリー作品です!




劇的解決!


ホームズと共同で生活することになったワトソン。

傍から見て変わり者のホームズが難事件に挑みーー

一挙解決のミステリー。

初ホームズ。

こういうものだったのねという感じ。

ミステリーというかキャラ小説だねこれは。

ホームズはこんな変わり者でこんな奴でというエピソードを最初に固めるのは

ラノベでよく見かけるキャラモノの手法。

肝心のミステリー部分は一瞬で見破りすぎてあっという間である。



今日の甘口!


・流れ

  ワトソンはひょんなことから

  ホームズと暮らすことになる。

  ホームズは変わり者だが警察が協力を求めるほど優秀で・・・という流れ。

・テイスト

  ホームズというキャラクターを中心にした

  キャラ小説。

・キャラ

  【シャーロックホームズ】

  探偵。

  事件の解決のための知識を溜め込む。

  過去のあらゆる事件を頭に叩き込み科学にも精通。

  【ワトソン】

  ホームズの同居人。

  だらだら過ごしている内にホームズの生活形態に興味を持つ。



今日の辛口!


・全体

  キャラモノなので難しいのが読めない人でも

  サクッと読めると思います。

  昔も今も変わらないな~と気付かせてくれる一冊でした。



以上、

これがホームズ、な?!

ミステリー作品でした!


2022年1月2日日曜日

オリエント急行の殺人  読みました!!

タイトル : オリエント急行の殺人

賞種   : -

出版   : ハヤカワ文庫

著者   : アガサ・クリスティー

イラスト : -



今日のインプレダクションはコレ!

ミステリー作品です!




幕引きの方法


普段は空きがあるオリエント急行が満室で、

雪で立ち往生したところに事件が起こる――

鉄道のミステリー。

なかなか楽しめました。

そう来たかと思わされるも、

よくよく考えてみればこれは随分と昔に書かれた作品で

そこにも驚かされる結果となりました。

丹念に積み重ねていく事情聴取、

僅かに垣間見える綻び、

最後に芋づる式に釣りあげていく展開、

それは上質な織物が出来上がっていくのを見ているようでした。

終わり方に粋を見ました。



今日の甘口!


・流れ

  探偵ポアロはオリエント急行に乗る。

  そこで殺人事件が起きたため、

  急遽犯人が誰なのか推理することに・・・という流れ

・テイスト

  ミステリーです。

・キャラ

  【エルキュール・ポアロ】

  探偵。

  独特のマイペースで

  相手によって接し方を変える。

  【ブーク】

  鉄道会社の重役。

  列車の手配など色々ポアロを優遇してくれる。

  推理では先走り役。

  【メアリ・デブナム】

  家庭教師の女性。

  冷静で本音を表に出さない。

・秀逸な幕引き

  これは日本では見たことの無い幕引きでした。

  日本の場合はこうしてはいけないみたいな固定観念に囚われていて、

  なかなかこういう終わり方ができないのかもしれません。

  とはいえ、本作は多方面に影響を与えたはずで、

  日本でも古い作品ならば見当たるのかも?



今日の辛口!


・全体

  編み方がさらりとしていて、

  それでいて上手く編み上がっていると感じます。

  ただちょっと情報の提示が遅いかな。



以上、

列車内で起きた、な?!

ミステリー作品でした!