賞種 : -
出版 : 新潮文庫
著者 : 石井 光太
イラスト : -
今日のインプレダクションはコレ!
近代ドラマ作品です!
地獄の箱
ハンセン病患者が集まりひっそり暮らす寺と
そうでない者達が暮らす村があり――
ハンセン病の激しい差別を描いた近代ドラマ。
とても苦しい読後感でした。
とにかく無念。
いわば無念が詰まった箱を解錠したみたいに、
読み進めるごとに1つ、また1つと無念が
飛び出してくるようでした。
それらの無念を成仏させるために書いたのか
というくらい、徹底的に書いていますね。
今の時代を生きるわたし達に凄く大事なことを
示唆してくれる1作だと思います。
今日の甘口!
・流れ
父がいる四国へ向かった青年。
父が生まれた村にはとても大きな闇があった。
山奥でひっそり暮らすハンセン病患者達への差別・迫害。
父のノートにはその激しさが
書き残されていた。
幼い頃父は村を出て、
ハンセン病患者達と共に生活していた時期があり、
そこで差別と迫害を目の当たりにしていたのだ・・・という流れ
・テイスト
現代パートと交互に父の少年時代も
描かれます。
父の少年時代では
差別する側の集団で生まれ育った者が
差別を受ける側の集団に入り、
その差別の実態を目にする
様子が描かれます。
・キャラ
【耕作】
感染症研究所職員の青年。
父に委縮しながら生きてきたせいで
個性に乏しい。
【乙彦】
耕作の父
貧困から会社社長、それから都議にまで
上り詰めたが、
とある事件を起こしてからは
ひっそり生活していた。
・差別を知るには
本作は差別を知らない人が
差別がどういうものか知っていけるような
構成になっています。
高校生~大学生辺りで1度は
読んでほしいものですね。
今日の辛口!
・全体
ツッコミどころは見当たりませんでした。
著者は普段はノンフィクションを
書いているそうです。
ではなぜこのハンセン病に関しては
フィクションの形式をとったのか?
これは想像しかできませんが、
もしかしたら取材を重ねるにつれて
ある問題に直面してしまったのかもしれません。
実際に差別をしていた側を取材したら
「もう裁かれることは無いが、裁かれないことこそが苦しい」
と吐露した人がいたと仮定します。
ではその人を実名で書くか?
その人は断罪されることを望んでいるものの、
実名で書いた場合のインパクトを考えた時、
非常に悩ましいことになります。
そこでフィクションにした、とか。
まあ、深読みし過ぎかもしれませんが。
検索してみると、
取材が限られていたこと、
生き残っている方が少なかったこと、
実名を表すわけにはいかないこと、
と語っているようです。
以上、
無念の詰まった、な?!
近代ドラマ作品でした!
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