2020年2月23日日曜日

オリンポスの郵便ポスト  9個星です!!

タイトル : オリンポスの郵便ポスト
賞種   : 第23回電撃小説大賞・選考委員奨励賞
出版   : 電撃文庫
著者   : 藻野多摩夫
イラスト : いぬまち


今日のインプレダクションはコレ!
ファンタジー作品です!


評価は
★★★★★★★★★☆
9個星です!!


生きるということ

長距離郵便配達として依頼されたのは、
手紙でなく全身サイボーグの人そのもので――
切ない系ファンタジー。
かなり良かった!
ゆっくりと死んでいく世界、
点々と存在する隔絶された場所、
そこで生きる人々。
何か頑なな思いがあるけれども、
それを拠り所としなければ生きていけない人達。
死ぬことが扱われていますが
生きることが印象に残りました。
童話的な雰囲気も織り込みながら
これだけのお話を作り上げた手腕は
今後に期待できますね。


今日の甘口!

・流れ
  火星への入植からずいぶん経ち、
  しかしそれは隕石嵐が引き金で
  失敗に終わった。
  地球との交信も途絶え死にゆく火星。
  だがまだ残っている人々は
  生活を続けている。
  郵便配達員の少女は
  長距離配達で何週間も家に帰らないことがある。
  今回舞い込んできた仕事は、
  不思議な依頼だった。
  サイボーグの男性が、
  オリンポス山の郵便ポストまで
  連れていってほしいと言う。
  その男性は死に場所を探しているというが・・・という流れ
・テイスト
  火星が舞台、でも荒廃している
  という特異な環境です。
  地球で荒廃した世界が描かれる
  ことが多いですが、
  それが火星ならどうなるか・・・
  という視点で見てみると
  面白いでしょう。
・キャラ
  【エリス】
  主人公少女
  やや淡々と生きている感じ
  思ったことが口をついて出てしまう
  【クロ】
  サイボーグ男性
  全てを達観したような性格
・作品とは
  どういう状況下に置かれた時、
  人間はどう行動するか。
  そうしたことを表すのは
  小説の大事な使命の1つだと思います。
  その点ではこれはまさに
  読んで良かったと思える小説です。

  ちなみに作中では、
  火星への初期入植者が犯罪者で
  その人達を強制労働させたといった設定でしたが、
  つい最近火星への片道切符で
  火星生活の実験に参加したい人を募集したところ、
  応募が殺到したようです。
  そのため強制労働による入植には
  ならないかもしれません。


今日の辛口!

・文章
  お話としては良かったのですが、
  本作は誤字脱字が散見され、
  それがいい所で露呈してしまったり
  しています。
  よく『文章力は関係ない』などと
  声高に主張する人達がいますが、
  それは間違いです。
  いい所で誤字脱字があると
  読み口が大きく阻害されてしまうので、
  書き手の人はもちろん編集や校閲の人が
  『1作品に誤字脱字はいくつまでに抑える』
  という気概を持って取り組んでほしいですね。
  今後に期待しています。


以上、
死にゆく火星、な?!
ファンタジー作品でした!

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